即ち、道は続いていく。

或る一つの戯れ言。

此処はささやかで小さな書庫。
書棚には様々な厚みの書が押し込まれ、その何れもが、手に取った人に己の物語を紡ぎ読み解いて貰うその刻を待ち詫びている。

それら無数の書たちに全方位から見下ろされながら、一人の『あなた』が立ち尽くしている。
日常、学校、仕事、生活、人間関係。煩雑なものたちに囲まれた苦しく楽しい道を歩いて来て、ある日辿り着いたその書庫の扉を開いた『あなた』だ。
それは気紛れだったかも知れない。暇つぶしだったかも知れない。純粋な興味だったかも知れない。それとももっと下らない理由だったかも知れない。

やがて『あなた』は書を次々手に取り、夢中になってそれを読み漁った。名も無き彼らの物語に触れる事で何かが今までとは変わった『あなた』も或いは存在しただろう。
然し今、『あなた』の手は書棚から遠ざけられて仕舞った。
手を伸ばした。不平をこぼした。嘆きの溜息をついた。諦めて肩を竦めた。
『あなた』は己の周囲に散らばる、読み漁った書たちを見下ろす。此処にある物語たちだけが、『あなた』の手に出来た全て。『あなた』の知る事が叶った、ささやかで小さな世界の全て。

書は閉ざされ、それでも『あなた』の道は続いて行く。
書庫は残され、それでも『あなた』の道は続いて行く。
だが、まだ沢山の物語たちの完結を知る事は叶っていないし、紡がれてもいない。
書棚で眠る無数の書たちは、いつか開かれるその時をただじっと物言わず待ち侘びて其処に在り続けていると言うのに。

残された物は多い。謎も、未練も、惜しむ思いも。足下に散らばった書からは栞や付箋が乱雑にはみ出している。『あなた』の無聊を慰め続ける役割を負った故に、書棚にももう戻れずに其処に居続けている。
『あなた』は再びそれらの書を開くだろうか。
続きを記してみる『あなた』は現れるだろうか。
彼らを蘇らせる事が叶うのは『あなた』に与えられた権利。
それを『あなた』が忘れた時、このささやかで小さな書庫は脆くも消え去るだろう。

いつかは、未だ見ぬ書棚にも手が届く様になるだろうか。
いつかは、未だ読んでいない物語たちも何かの拍子に書棚から落ちては来ないだろうか。
今はただ、冷たい書庫の床上で、残された書たちと共にそれを見上げる。


*

その頃わたしにとってスマホでプレイするゲームとは、暇つぶし以上のものにはなりませんでした。
買い切り型のパズルゲーム(と言うか無料)、某なめこの様な放置育成ゲーム、箱庭ゲーム。精々その程度のものしかプレイした事がありませんでした。

PCからAPP Storeの無料アプリランキングをジャンル毎になんとなく見ていた時、偶々目に付いたドラ助さんのアイコンに惹かれて、ロードラに出会いました。
他のゲーム達の様な格好良いモンスターや可愛い女の子のアイコンでは無く、美麗なイラストのカードや立ち絵やボイスも無い。
それでもただ一頁繰った物語に強烈に惹き付けられました。
「ロードラフォーマット」のキャラクターたちは美麗な絵で描かれた解り易い「キャラクター」では無いのに、魅力的なデザインや物語を持っている。物語を夢中になって読むのに必要なのは挿絵でも誇大な宣伝文句でも無く、与えられた最低限の情報から拡げる事の出来る自由で素敵で不完全な世界でした。


思い出すと止まらない程に、未練も惜しみもあります。読み残しか。それとも食べ残しか。
「きっとお会い出来るとそう信じています」
と仰っておられるので、ロードラ2(仮)の見込みは決してゼロではないのかな、と思ってみたり。

「いつかまた」。沢山の人に向けて贈られた、D直々のこの言葉を信じています。


*
*
*


ありがとうございました。

まだ、わたしたちの道は先に続くけど。
時々、少しだけこの道を歩いた日々を懐かしむ事を許して下さい。
惜しんで、振り返る事を許して下さい。

次の「道」が紡がれる事があったとしても、ここまで歩いて来た「この道」を大事にし続けたいのです。

ありがとうございました。
いつか、また会えると信じ続けたその日に、再びお会い出来る事を願って。

今は、辿り着いたこの道の果てで、栞を挟んだ侭の書を名残惜しく置きます。

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